静岡商工会の調査より

「先代の事業の流れをそのまま踏襲するだけでなく、
新規開拓に目を向けたときに相談相手が必要です」

2016年から取り組みを開始したSBI事業承継WGはヒアリングのための調査項目の検討から開始しました。出来上がったのが中小企業研究所・静岡商工会廃業・事業承継等に関する合同調査表(下記)です。
スタート当初は「廃業された経営者のその後の実態調査」も行うことも重要との認識がありました。「倒産」や「廃業」のその後のヒアリング調査ですから困難を極めました。静岡商工会では現在もヒアリング調査が継続して行われています。使用されたヒアリング調査表はSBI事業承継WGの初代座長の丸山健弁護士(当時のSBI理事)を中心にまとめられたものです。メンバー内では「丸山シート」の愛称で呼ばれていました。同シートを今回公開いたしますが、著作権等の所属はSBIとなりますので、ご活用の際はご一報ください。

河口俊静岡商工会事務局長河口俊静岡商工会事務局長

2016年11月・調査報告概要 廃業7件 事業承継2件

廃業事業所の特徴

  • 廃業時の事業主の年齢は一番若くて60歳で70歳を超えてからの廃業が目立つ。
  • 従業員を抱えている事業所が少なくいたとしても身内だったりして廃業の判断はしやすかった。
  • 事業規模も大きくなく借入先が金融機関であったところは1件だけでそれ以外は身内からの借入のため廃業しやすかった。
  • 廃業理由では年齢のことが必ずあり、次いで取引先の減少と病気(体調に起因)という結果。
  • 任意整理が6件で自己破産が1件。それでも自宅を維持できた。
  • 廃業を見こし家族内での相談や商工会に相談していたところが多い。法人の場合は特に事前準備も含め相談に乗っておかないとこれから起こるであろう事例にも対処できないと思う。
  • 消費税増税を起因とした廃業はなかった。
  • 今回の調査事例の会員は規模が小さすぎて小規模企業共済に加入していないケースが目立った。
  • 廃業の選択が正しかったと答えた事業所が多かった。廃業後健康診断を受けて病気が見つかったケースが2件あった。如何に小規模事業者が健康診断を受けずに事業を継続しているかがわかる。全体への警鐘をした方がよいかも?
  • 収入源は年金だけという人がほとんどだが何とか生活できている。
  • 相談事について退会してしまっているため手助けしてもらえるか不安だった様子。こちらからの声掛けをしてもらって安心できたようである。
  • 今後の相談場所として商工会やNPOを頼ってくれるよう話してきたので相談事項がおぼろげにあった人は安心できたようである。
2019年6月・調査報告概要 廃業10件 事業承継5件

事業承継事業所の特徴

  • 承継した年齢は43、50とまだ余力のある年齢であった。
  • 両事業所とも法人で、事業承継の形は違うが次世代の承継候補がいることからその育成方針が課題。
  • 両事業所とも地域や業界では世話役的な位置にいて人望もある。
  • 現状の生活は安定している。
  • 承継時から相談相手として商工会の存在があった。