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今後の最低賃金の引上げ予測

2023年度、2024年度は年3%程度の引上げが見込まれる
最低賃金全国加重平均1000円対策が必要になってくる

2022年11月25日、特別セミナー<中小企業と最低賃金の現状と将来予測>が開催(Web開催)されました。厚生労働省は令和3年度に「最低賃金に関する報告書」をまとめ公表しています。講師の小前和智氏(東京大学大学院博士課程在籍)はその報告書に関わっておられますので、同「報告書」を読み解かれる中で最低賃金の現状と課題及び今後の予測をセミナーで明らかにされています。今回の特別セミナーは、ティグレグループ、一般社団法人中小企業研究所、一般社団法人静岡中小企業研究所の3者による共催で開催されています。最初に、主催者を代表して橘悦二ティグレグループ代表よりのご挨拶でスタートし、最後に河口俊一般社団法人静岡中小企業研究所専務理事のご挨拶で閉会致しました。司会はティグレグループの福本真二氏が担当され、3団体それぞれの参加者の皆さんにセミナーの内容を持ち帰り討議を深めて頂きたいと問題提起されていました。

今回の資料<「最低賃金に関する報告書」から読み解く最低賃金の今後の課題>は、ここをクリックして頂ければ全文を見ることが出来ます

次に小前氏のご報告と資料によりポイント解説を編集部としてまとめました。

厚生労働省「最低賃金に関する報告書」について

講師の小前氏は、「報告書」の中で力が入っているのは<第2章 最低賃金と労働者の賃金・生活>ですと報告されていました。

「報告書」の概要版:https://www.mhlw.go.jp/content/000974537.pdf
「報告書」の全体版:https://www.mhlw.go.jp/content/000973897.pdf

(編集部解説):同「報告書」は厚生労働省の2021年度委託事業「最低賃金に関する調査研究等事業」により、株式会社三菱総合研究所が作成しています。本文中のデータや図表の一部については、厚生労働省労働基準局が提供しています。「最低賃金に関する研究会」の座長は玄田有史東京大学社会科学研究所教授です。「報告書」の全体版は328Pもありますが、各章の「小括」がいいまとめになっています。

1,最低賃金近くで働く人が増えている

小前氏の資料6Pの<最賃近傍雇用者割合の推移>を見ていくと2011年は8、5%だったものが2020年には14、1%と増えていることが分かります。

2,概ね小規模の企業ほど最低賃金近くで働く人の割合が高い

この見出しは小前氏の見解と同じです。企業別統計をよく見ていくと、宿泊業・飲食・サービス業を規模別の<5~9人>では46,0%と非常に高いのが現状です。
(最低賃金近傍労働者を<最低賃金近くで働く人>と表現しています)

3,最低賃金近くで働く人の3割程度が世帯の最多所得者である

この見出しも小前氏の見解です。「既存研究では(正社員の夫をもつ)主婦パートや学生アルバイトが最低賃金近傍雇用者であるとされてきたが、統計を丁寧に観察すると事実発見も」との見解を報告されています。

以上、3点ほどの解説ですが、小前氏の当日資料は今後<中小企業・小規模事業者と最低賃金>を考えていく場合においてヒント満載の資料となっています。司会の福本真二氏が参加者に呼びかけられていた<参加者が所属する団体に持ち帰り、討議を深めて下さい>と提起をされていました。SBIでは社会保障WG(座長:小前和男)を中心に昨年より討議を重ねています。今回の特別セミナーの内容を踏まえてさらなる討議を重ね、SBIとしての見解を明らかにする予定です。準備出来次第ですのでその時期は現在のところ未定です。

あと1年ないし2年は、3%程度の引上げが見込まれる
1000円越えの水準は重要な分岐点

現時点での最低賃金の平均940円に年3%であれば1年に約30円の引上げとなり、2年で約60円、つまり1000円となる計算です。

現政府自身、「経済財政運営と改革の基本方針2022について」の中で「その1:人への投資のためにも最低賃金の引上げは重要な政策決定事項である。その2:出来る限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引上げに取り組む」と明記している。

最後に小前和男SBIロ理事長のコメントです。

「報告内容で、最賃引き上げの「影響度」が高くなっていることは中小企業にとっておおきな課題になっていることも指摘されています。

労働者にとって引き上げは効果をもたらすとしても、中小企業(零細)にとってはかなり死活問題になりつつあること、従来議論されてきた、貧困層に対する施策を最低賃金によるか社会保障政策とのすみわけについて指摘あったことは、今後重要な論点と考えます。」