令和4年度税制改正大綱
昨年の12月に「令和4年度税制改正大綱」が発表されています。この税制改正大綱は社会経済の状況を踏まえ税制改正の指針を示すもので、今後の税制の変化をいち早く知ることができる資料です。大きな変化があった昨年の税制改正と比較すると変動する項目は少ないですが、中小企業者や事業者の皆さんに影響のありそうな項目を解説していきます。
2年後には紙ベースの保存は出来なくなります
ここ数年議論となっていました電子帳簿保存法の改正ですが2年間の猶予が設けられました。令和4年度1月1日の施行に変化はありませんが「保存することができなかったことについてやむを得ない事情」がある場合はデータでなく紙の書式で保存する経過措置を受けることができます。この「やむを得ない事情」の認定に関しては特別な手続きを要さないようで、調査に来た税務職員の裁量によるものと思われます。しかしこの猶予も2年とされていますので2年後は電子取引データを紙ベースで保存することは出来なくなります。今からの準備をおススメします。
住宅ローン減税の見直し
住宅ローンを組んだ方を対象にしている住宅取得等特別控除も、控除率や所得要件が低くなる代わりに控除対象の住宅の種類が増えることになりました。
控除率は令和3年まではローン残高の1%だったものが、令和4年以降は0・7%に引き下げられることになります。控除額が利息金額より大きくなってしまうことに対する措置だそうですが、端的に言えば増税です。また所得要件も従来は3000万円以下の方が対象になっていましたが、令和6年からは2000万円以下と厳しくなりました。
その代わり減税を受けられる期間は従来10年間だった部分が、令和4年と5年では新築が13年と延長されたほか、認定住宅・一般住宅・ZEH・省エネ住宅と区分が細分化され控除期間や控除対象借入限度額もそれぞれ変わるようになります。今回の変更は昨今のSDGsの流れから、より環境性能の高い住宅を取得するように促すことが目的とされていて、こうした流れは一般化したエコカー減税と同様主流になっていくと考えられます。
法人の賃上げ減税
賃金減税は従来から法人の給与増額率などを要件に、より多くの従業員に還元した場合には減税額が増加される仕組みになっていましたが、今回の改正でこの追加減税部分が拡充されることになりました。
給与総額を1.5%以上増額する条件は変更ありませんが、継続雇用者の給与を2.5%以上増加させることで、給与総額増加分の15%を控除でき、これに加え教育訓練等を10%以上増額することで給与総額増加部分の25%を控除することが出来ます。つまり条件を満たせば合計で給与増額部分の40%の税額控除を受けることが可能になったということになります。
政府の目論見
以上が令和4年の税制改正のポイントです。年末世間を騒がせたあげくに引っ込めた格好となった電子帳簿保存法改正の猶予をはじめとした、スフグレーションや円の弱体化に対しての賃上げ減税など、場当たり的な対応をしている印象は否めません。
特に前述の賃上げ減税は、このコロナ禍においてどれほどの企業が対象となるのでしょうか。受注が入らず従業員も休業させている企業があることを政府は本当に知っているのでしょうか。「生活が厳しいなら賃金を増やせばいいじゃないか」という岸田内閣は国民生活が見えていないと言わざるをえません。
<この記事は静岡中小企業研究所の協力で編集されています。但し、最終文責は当中小企業研究所にあります。>