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岸田政権の「外国人労働者対策」に異議あり、根本的な見直しが必要

12月8日(金)に<外国人労働者問題「公開学習会」>が中小企業研究所と静岡中小企業研究所の共催でZOOM方式で開催され、計49名の参加で無事終了致しました。当日の講師は鶴田博和KSC関東スタッフ協同組合常務理事にお願いしました。http://www.k-staff.jp

 現在の日本社会では労働人口の減少や人材の都市部への集中、現業を避ける若年層の志向から、地方や中小零細企業を中心に慢性的な人手不足が深刻化しており、外国人がその穴を埋める担い手となっている状況が報告されました。

技能実習生:約32万5千人、特定技能:約13万1千人です。(当日資料「在留外国人統計」を参照)


  1. 1960年代 海外進出を進めるうえで、社員教育の一貫として、研修制度が実施されていた。
  2. 1980年代 本格的海外進出にともない、産業界からの要請あり、現地外国人教育の限界から、日本での人材教育が実施された。併せて所詮4Kを中心に人材供給の要請が増大した。研修制度は雇用契約もなく、手当で処理され、一部で権利の著しい侵害が行われていた(タコ部屋等)。
  3. 1993年より基本三年間とする技能実習制度が発足した。企業(実習実施機関)と実習生との間に雇用契約・入国前教育・入国後日本語教育が実施され、一年目(一号)から二年目以降(二号)技能試験・日本語試験が課せられ、雇用契約に伴う社会保障制度への加入が義務付けられた。
  4. 2017年 技能実習制度の二年間延長の見直しが行われた。
  5. 2019年 特定技能が創設された。特定技能者の就労斡旋に登録支援団体(届け出制が導入され、民間大手派遣会社から未経験者の登録が可能となる)が創設された。届け出制故に誰しもが登録可能となった。
  6. 2024年の制度改正(?)で技能実習制度の廃止、育成就労制度へ?
  1. 来日するための多額の借金問題。来日に係る手数料は技能実習生の母国毎に法律で定められているものの、募集から採用までの過程でブローカーの介在や、送り出し機関による法定外費用の請求も指摘されており、ほとんどの技能実習生は借金を背負った状態で来日している。
  2. 技能実習生の転籍は制限されている。技能実習制度における目的と現実の乖離が起こっている。具体的には技能実習制度は人財育成・技能移転・国際貢献を目的としており、技能実習生は労働力ではないというのが制度の趣旨であり、それ故に技能実習生の転籍は制限されている。
  3. 実習実施者(企業)による人権侵害行為が助長され易い環境がある。借金を背負転籍が制限されているため、人権侵害行為やハラスメントの発生が助長され易い環境となっている。
  4. 失踪者の多発、外国人犯罪の増加による治安の悪化。上記1~3の結果として、実習実施者から逃げ出し不法就労や犯罪行為に走る外国人が増加し、社会問題となっている。
  5. 特定技能における人材の都市部への集中。転籍が認めれている特定技能制度において、ほとんどの対象者が都市部での就業を希望し、地方で育成された人材が都都市部に流出する構造となっている。

以上のような歴史的経過や現状を踏まえ、技能実習制度と特定技能制度の問題点やの解決及び改善を期し、現在、岸田政権は「有識者会議」により新たな制度の在り方が検討され、「有識者会議最終報告書」が出されようとしています。

この「最終報告書」に対して、与党自民党や業界団体から「最終報告書たたき台」に対して異論が出され、最終の審議がずれ込んでいます。ここで「緊急提言」を出したのが、一般社団法人外国人材共生支援全国協会(通称:NAGOMi)です。

「外国人就労者との共生を目指し、技能実習生などを適切に保護するための、監理団体などの全国組織として」2020年10月8日に設立されています。代表理事・会長は武部勤(元衆議院議員・元自民党幹事長)。全国をブロックに分け、事業を展開しています。

講師の鶴田博和氏はNAGOMi関東甲信越協会の幹事です。https://nagomi-asia.or.jp

  1. 技能実習制度を、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度とする。実態に即した見直しとする
  2. 外国人材に日本が選ばれるよう、技能・知識を段階的に向上させ、特定技能への円滑な移行を図る
  3. 人権保護の観点から、一定要件の下で本人意向の転籍を認める。監理団体の用件の厳格化
  4. 日本語能力を段階的に向上させ、受け入れ環境の整備
  1. 両制度の整合性のとれた一貫性のある制度へ
  2. 新制度は「基礎的人材育成機関」、特定技能は「実践的人材育成機関」とし、一貫した人材の育成制度へ
  3. 両制度は地方の「人材確保」につながる仕組みとすべき
  4. 魅力ある働き先国としての、眞の能力実積主義に基づくキャリアアップへ
  5. 特定技能を名実ともに人材育成に相応しい制度へのキャリアアップ制度へ
  6. 一年後の転職を可能とした最終報告の再考と、長期安定就労者に対するインセンティブの付与を
  7. 対象職種以外の職種についても利用可能な制度とすべき
  8. 転籍時の民間職業紹介事業者の関与は撤回すべき
  9. 両制度をカバーする管理支援制度の創設を
  10. 外国人材受け入れ共生に向けた基本法の制定を(議員立法)

上記の「有識者会議の4つの方向性」と「NAGOMi提言」を比較すれば、岸田政権が進めようとしている「外国人労働対策」の問題点は明らかになります。例えば、転籍時に登録だけの実積のない民間職業紹介事業者の関与を「有識者会議」は認めようとしています。「悪質な企業・団体・個人から外国人材を守り、健全な企業等に配属される外国人就労システムを定着させる」ことが必要な時に、それに反する議論であり、NAGOMiによる「その撤回」要請は正しいと思います。

また、NAGOMI提言では<両制度は地方の「人材確保」につながる仕組みとすべき>を重要な柱に据えていています。「有識者会議」では留意事項として触れているだけでその重要性の認識は低いと言えます。地方及び中小零細需要者の立場からすればNAGOMI提言賛成となるのは当然です。

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